【執筆・監修】
ぱんだ整体院 院長 安井真一
施術歴30年以上/開院20年/延べ6万人以上を施術
慢性的な腰痛・神経痛・原因のはっきりしない不調に対し、神経の働きや身体の回復力に着目した施術を行っています。
近年の神経科学や痛み科学(Pain Science)の考え方も取り入れながら、神経の働きという視点から身体を評価し施術を行っています。
本記事は、日々の施術経験と継続的な学びをもとに作成しています。
「レントゲンでは異常ありませんね」
「MRIでも大きな問題は見当たりません」
病院でそう言われたにもかかわらず、痛みが続いているという方は少なくありません。
腰痛、肩こり、首の痛み、膝の痛み、坐骨神経痛のような症状など、長く続く痛みに悩んでいる方の中には、
「異常がないのになぜ痛いのだろう?」
「気のせいということ?」
「このまま一生治らないのでは?」
と不安になる方もいるでしょう。
しかし近年の研究によって、痛みについての考え方は大きく変化しています。
それが現代の痛み科学(Pain Science)です。
現代の痛み科学では、痛みは単純に「体が壊れているから起こるもの」ではなく、脳と神経系が体の安全を守るために作り出している防御反応であると考えられています。
この記事では、なぜ異常がないのに痛みが続くのか、そして現代の痛み科学がどのように痛みを捉えているのかを分かりやすく解説していきます。
長い間、痛みは非常にシンプルに考えられていました。
つまり、
「痛み=組織の損傷」
という考え方です。
もちろんこれは間違いではありません。
転んで膝を擦りむけば痛みますし、骨折すれば強い痛みが出ます。
しかし実際には、それだけでは説明できない現象が数多く存在します。
例えば、
ヘルニアがあるのに痛みがない人
MRIで異常が少ないのに強い痛みがある人
傷が治っているのに何年も痛みが続く人
こうしたケースは決して珍しくありません。
現代の痛み科学は、このような矛盾を説明するために発展してきました。
現代の痛み科学(Pain Science)とは、痛みを「単なる体の故障信号」としてではなく、脳と神経系が総合的に判断して生み出す“防御反応”として捉える考え方です。
従来は、痛みは傷や炎症など「組織の損傷量」に比例すると考えられてきました。しかし近年の研究では、痛みの強さと実際の組織状態が必ずしも一致しないことが分かってきています。
例えば、
レントゲンやMRIで大きな異常がないのに強い痛みがある
逆に大きなヘルニアがあっても痛みがない人がいる
ケガが治った後も痛みだけが残ることがある
こうした現象は、単純な「壊れている場所=痛み」というモデルでは説明できません。
そのため現代では、痛みは脳と神経系が“今この体は危険かどうか”を判断した結果として生じる体験であると考えられています。
痛みは、体の一部で直接作られるものではありません。
実際には次のような流れで生まれます。
つまり痛みとは、単なる信号ではなく、脳による最終判断の結果として体験される感覚です。
重要なのは、この判断には身体の状態だけでなく、さまざまな要素が影響するという点です。
これらが重なると、実際の損傷が軽くても痛みが強くなることがあります。
痛みの本来の役割は体を守ることです。
例えば熱いフライパンに触れた瞬間に手を引っ込めるのは痛みのおかげです。
もし痛みがなければ、大きなケガをしてしまうでしょう。
つまり痛みは、
危険を知らせる警報システム
なのです。
火災報知器をイメージしてみてください。
火災報知器は火そのものではありません。
危険を知らせるための装置です。
痛みも同じです。
痛みがあるからといって、必ずしも組織が大きく壊れているとは限りません。
逆に組織が傷ついていても痛みが少ない場合もあります。
重要なのは、
脳と神経系がどれだけ危険を感じているかということです。
神経系の役割は「痛みを感じること」ではなく、
体を安全に保つために全身の情報を統合することです。
神経系は常に以下のような機能を同時に行っています。
その中で、「危険の可能性」が高いと判断された場合に、体を守るための反応として痛みや筋緊張が出現します。
つまり痛みは、単なる故障のサインではなく、神経系が体を守るために出している警報のようなものです。
この仕組みがあることで、人間は重大なケガを防ぐことができます。
現代の痛み科学で最も重要な考え方があります。
それは、「痛みは脳が作り出している」ということです。
これを聞くと、
「気のせいと言いたいの?」と思う方もいるかもしれません。
しかしそうではありません。
痛みは実際に存在しています。
ただし、痛みは患部からそのまま送られてくるものではないのです。
体の各部位から送られてきた情報を脳が分析し、
「危険がある」
と判断したときに痛みが発生します。
つまり痛みは、組織の状態だけではなく、
なども含めて総合的に判断された結果なのです。
画像検査などで明確な異常がないにもかかわらず痛みが続く場合、背景には神経系の過敏化が関係していると考えられています。
これは「中枢性感作」と呼ばれる状態です。
中枢性感作とは、脳や脊髄を含む神経系が敏感になり、本来であれば問題にならない刺激にも過剰に反応してしまう状態です。
この状態では、
といった現象が起こります。
これは「気のせい」ではなく、神経系の警戒レベルが上がり続けている状態です。
長期間の痛みやストレス、不安などが続くと、脳は「まだ危険があるかもしれない」と判断し続けるため、痛みが慢性化しやすくなります。
現代の痛み科学では、神経系の過敏化を中枢性感作(Central Sensitization)と呼びます。
これは脳や脊髄などの中枢神経が敏感になった状態です。
本来なら危険ではない刺激にも強く反応するため、
痛みが長引きやすくなります。
中枢性感作が起こると、
組織の回復が終わった後でも痛みだけが残ることがあります。
そのため、
「異常はないと言われたのに痛い」
という現象が起こるのです。
これは決して気のせいではありません。
神経系が実際に過敏な状態になっているのです。
神経系の仕事は痛みを感じることだけではありません。
実際には、
など、体のあらゆる機能を管理しています。
神経系が安全だと判断すれば、筋肉は適切に働き、体はスムーズに動きます。
しかし危険を感じると、
体を守るために
筋肉を固める
動きを制限する
痛みを出す
という反応を起こします。
つまり痛みは敵ではなく、体を守ろうとする結果として起こっている場合があるのです。
現代の痛み科学では、痛みを「壊れている場所の問題」としてではなく、脳と神経系の“保護戦略”として捉えることが重要だとされています。
この視点では、痛みは次のように理解されます。
痛み=異常の大きさではない
痛み=脳の危険評価の結果
痛み=体を守るための出力
そのため、改善の方向性も変わります。
単に患部を治すだけではなく、
神経系の過敏さを落ち着かせる
安全だと感じられる環境を増やす
動作に対する恐怖を減らす
体の使い方を再学習する
といったアプローチが重要になります。
痛みは敵ではなく、体を守ろうとする結果として出ているサインであるという理解が、回復の大きなヒントになります。
現代では、痛みは「悪い場所の証拠」ではなく、
体を守ろうとして出ているサイン
そのため大切なのは、
「どこが壊れているか」だけを見るのではなく、
体が今どういう状態か
神経がどれくらい緊張しているか
どんな生活やストレスがあるか
といった全体を見ることです。
体は壊れているのではなく、守りすぎている状態のこともあります。
現代の痛み科学(Pain Science)は、痛みを単純な「故障のサイン」としてではなく、
脳と神経系が体の安全を守るために作り出す防御反応として捉える考え方です。
そのため、
検査で異常が見つからない場合でも痛みが存在することは十分に起こり得ます。
重要なのは、「どこが悪いか」だけを見るのではなく、
なぜ神経系が警戒を続けているのかという視点です。
この理解は、長引く痛みの見方を大きく変え、回復への新しいアプローチにつながります。
大切なのは、「壊れているかどうか」ではなく、
体がなぜ守ろうとしている状態になっているのか
この考え方を知ることで、痛みの見え方は大きく変わります。
■ 主要な研究分野
■ 関連する重要な概念・理論
■ 主な研究者・臨床分野
■ 代表的な学術機関・学会
現代の痛み科学では、「痛み=組織の損傷量」という単純なモデルではなく、
脳・脊髄・神経系・心理・環境要因の統合的な結果として痛みが生じる
という考え方が主流になっています。
本記事は、痛み科学・神経科学・リハビリテーション医学の知見をもとに構成しています。
当院の施術は医療行為ではなく、身体の機能改善を目的とした整体です。
本ページは一例であり、
同様の症状でも原因や経過には個人差があります。
効果には個人差があり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。
また、強い痛みやしびれ、発熱、急な症状の変化などがある場合は、
医療機関での検査・診断をおすすめすることがあります。
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